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原状回復のグレーゾーンを巡るトラブル
トラブル対処・Q&A 2026年05月27日

原状回復のグレーゾーンを巡るトラブル

賃貸退去時の原状回復には、判断が分かれるグレーゾーンが多くあります。本記事ではトラブルの実例と対応を整理します。

はじめに

賃貸物件の退去時に発生する原状回復トラブルは、敷金返還トラブルの中心テーマです。国土交通省のガイドラインは整備されていますが、実際の物件状態は多様で、貸主・借主の意見が分かれるグレーゾーンが多く存在します。本記事では原状回復のグレーゾーンとなる事例、判断基準、トラブル発生時の対応を整理します。

原状回復ガイドラインの基本

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(2011年再改訂版)は、賃貸住宅の原状回復の考え方を整理した重要な指針です。基本ルールは次の通りです。第一に、原状回復は「貸主の負担」と「借主の負担」に区分されます。経年劣化(時間経過による自然な劣化)と通常損耗(通常の使用で生じる軽度の汚れ・傷)は貸主負担で、借主の故意・過失・善管注意義務違反による損傷は借主負担となります。第二に、貸主負担の典型例です。日焼けによるクロス・畳の変色、家具の設置跡(軽度なもの)、通常使用での冷蔵庫裏の電気焼け、画鋲・ピンの穴(壁紙下地に影響しない程度)、設備の自然劣化などは貸主負担とされます。第三に、借主負担の典型例です。タバコのヤニ汚れ・におい、ペットによる傷・におい、油汚れの過度な蓄積、引越し時の傷、結露を放置したカビ・腐食、釘・ネジ穴(壁紙下地まで影響したもの)などは借主負担となります。第四に、減価償却の考え方です。借主が原状回復を負担する場合でも、経過年数に応じた減価償却が考慮されます。たとえばクロスの耐用年数を6年とすれば、6年経過後の張替えなら借主負担は1円相当という考え方です。これは借主の負担を不当に重くしないための仕組みです。

グレーゾーンとなる典型事例

実務上、判断が分かれやすいグレーゾーン事例を整理します。第一に、長期間使用の傷・汚れです。10年以上の長期居住で、クロスの汚れ・床のへこみが発生した場合、これが通常損耗の範囲か、借主の過失かの判断が分かれます。一般的には長期使用による劣化は通常損耗として貸主負担となりますが、明らかな過失(飲み物をこぼした跡、家具を引きずった大きな傷など)は借主負担となります。第二に、結露・カビの問題です。北海道では冬期に結露が発生しやすく、窓周辺や押入れ内にカビが発生することがあります。借主が日常的に換気をしていれば通常損耗の範囲で貸主負担、放置していた場合は借主負担と判断される可能性があります。第三に、ペットによる傷・においです。ペット可物件でも、通常想定される範囲を超える傷・においは借主負担となります。ペット飼育による原状回復費用は、ペット可物件であっても契約書に明記されていることが多いので確認が必要です。第四に、喫煙によるヤニ汚れ・におい。室内喫煙によるヤニ汚れ・においは、通常使用を超える範囲として借主負担とされることが多いです。クロス全面張替え費用が請求されることもあります。第五に、画鋲・ピン・釘の穴です。画鋲・ピン程度の小さな穴は通常使用の範囲で貸主負担、釘穴や深い穴は借主負担とされます。下地ボードまで影響したかどうかが判断の境界線です。第六に、設備の故障・劣化です。エアコン・給湯器・水回り設備の経年劣化は貸主負担、借主の使用方法の問題(不適切な使用・清掃不足)は借主負担となります。

トラブル発生時の対応

原状回復トラブルが発生した場合の対応を整理します。第一に、入居時の状態記録です。これが最も重要な予防策です。入居時に物件の現状を写真・動画で詳細に記録し、傷・汚れ・劣化状況を貸主と共有しておきましょう。「入居時から既に傷・汚れがあった」ことを後から証明できれば、原状回復責任を回避できます。第二に、退去時の立会いと記録です。退去立会い時には、貸主・借主双方で物件状態を確認し、原状回復の対象範囲を協議します。立会い結果を書面化し、合意できない箇所は留保事項として記録します。第三に、見積もりの根拠確認です。貸主から原状回復費用の見積もりを受けた場合、項目ごとに必要性・金額の根拠を確認します。減価償却が考慮されているか、明らかに過剰な見積もりではないかを精査します。第四に、ガイドラインに基づく交渉です。国土交通省のガイドラインを根拠に、不当な負担が含まれていないかを貸主に主張できます。ガイドラインは法的拘束力はないものの、判例の蓄積や実務慣行として広く認知されており、交渉の有力な根拠となります。第五に、第三者相談です。当事者間で解決しない場合、消費生活センター、宅地建物取引業協会の苦情窓口、弁護士などに相談できます。少額訴訟(60万円以下の請求)も、低コストで利用できる解決手段です。第六に、敷金返還訴訟です。敷金から不当な原状回復費用が差し引かれた場合、敷金返還を求める少額訴訟・通常訴訟を提起できます。

まとめ

原状回復のグレーゾーンは多く、入居時の状態記録と退去時の慎重な対応が、トラブル予防の鍵です。国土交通省のガイドラインを参考に、適切な負担関係を貸主・借主で協議することが、円滑な解決につながります。バナナハウス株式会社では、苫小牧で賃貸退去時の原状回復に関するご相談を承っております。


この記事は北海道苫小牧市の不動産仲介会社「バナナハウス株式会社」のコラムです。住宅の購入・売却・賃貸についてご相談はお気軽にお問い合わせください。