道路拡幅・公共施設建設などで土地・建物を国・自治体に売却(収用)した場合、譲渡所得から最大5,000万円を控除できる特例。任意買収にも適用可能、買換特例との選択など、収用時の税制活用法を解説します。
はじめに
「市から道路拡幅のため自宅敷地の一部を売ってほしいと言われた」「区画整理事業で土地を提供することになった」――公共事業の対象になると、自分の意思とは関係なく不動産の譲渡が必要になります。こうした場合の譲渡所得には、最大5,000万円特別控除という強力な税制優遇が用意されています。本記事では収用等の特別控除の仕組み、適用要件、買換特例との選択、苫小牧市内での実例を解説します。
収用等の特別控除の概要|5,000万円特別控除の仕組み
【制度の趣旨】
公共事業による土地・建物の収用は、所有者の意思にかかわらず半強制的に行われます。所有者の経済的負担を緩和するため、譲渡所得から大幅な控除を認める特例が設けられています。
【5,000万円特別控除】
収用等により土地・建物等を譲渡した場合、譲渡所得から最大5,000万円を控除できます。
譲渡所得 =(譲渡収入 − 取得費 − 譲渡費用)− 5,000万円
控除後の譲渡所得に分離課税の譲渡所得税率(短期:39.63%、長期:20.315%)が適用されます。
【任意買収にも適用可能】
収用は本来「強制買収」を意味しますが、本特例は「任意買収」(協議による買取り)にも適用されます。多くの公共事業では強制執行前に任意買収が行われるため、ほとんどのケースで特例が使えます。
【対象となる事業】
・道路、河川、公園等の公共事業(土地収用法による事業)
・都市計画事業
・都市再開発事業
・区画整理事業
・公共施設整備事業(学校、病院、官公庁施設等)
・鉄道、空港等の公共交通インフラ整備事業
【適用要件】
1. 売渡し・収用前6か月以内に最初に買取り等の申出を受けたこと
2. 最初の申出から6か月以内に譲渡したこと
3. 譲渡人が個人または法人で、収用法等の規定により買い取られたもの
4. 同一の公共事業に関し2年以上にわたって譲渡した場合は、最初の譲渡年のみ適用
例:苫小牧市内の幹線道路拡幅で、自宅敷地150㎡のうち30㎡を市に1,200万円で売却(取得費200万円、譲渡費用なしの場合):
・譲渡益:1,200万円−200万円=1,000万円
・5,000万円特別控除適用後:ゼロ
・税額:ゼロ
譲渡益が5,000万円以下なら本特例で完全免税。譲渡益5,000万円超でも超過分のみ課税されるため、極めて強力な優遇制度です。
収用に伴う代替資産取得の特例|課税繰り延べ
【代替資産取得の特例】
収用された資産の譲渡対価で代替資産(同種・類似の資産)を取得した場合、譲渡益への課税を将来に繰り延べる制度。5,000万円特別控除と選択適用。
【適用要件】
・収用された資産と同種または類似の代替資産を取得すること
・代替資産の取得時期:収用日から2年以内(事情により4年まで延長可能)
・代替資産の用途:原則として収用された資産と同じ用途
【選択基準】
5,000万円特別控除と代替資産取得の特例は選択適用。判定:
ケースA:譲渡益≦5,000万円
5,000万円特別控除で完全免税。代替資産取得の特例は不要。
ケースB:譲渡益>5,000万円かつ代替資産取得予定
両者の比較:
・5,000万円特別控除:超過分のみ20.315%課税
・代替資産取得の特例:完全繰り延べ(ただし将来課税ベース増加)
ケースC:代替資産で同等以上の不動産を再取得
代替資産取得の特例で将来繰り延べ>5,000万円特別控除+部分課税
公共事業による収用は譲渡益が比較的小さいことが多く、5,000万円特別控除で済むケースが大半です。
区画整理事業・都市再開発事業での税制優遇
【区画整理事業】
都市基盤整備のため土地の区画形質を変更する事業。換地(新たな整形地)の交付を受けるのが一般的で、譲渡所得の計算は以下の特例が適用されます。
-
換地処分による土地の交換
・換地に対応する従前地の譲渡として、譲渡所得は発生せず(課税繰り延べ)
・換地が従前地より価値が高い場合の清算金は譲渡所得の対象 -
清算金の取扱い
・受け取った清算金は譲渡所得として課税
・5,000万円特別控除の適用が可能
【都市再開発事業】
市街地再開発事業による権利変換も、収用等の特別控除の対象になります。
権利変換による従前資産(土地・建物)の譲渡:
・新たな施設建築物の床(権利床)への変換は譲渡所得繰り延べ
・床に変換せず現金で精算する場合は譲渡所得の対象、5,000万円特別控除適用可
【苫小牧市内の事例】
苫小牧市内では駅前周辺の再開発、幹線道路の拡幅事業などで収用が発生します。具体例:
例1:駅前再開発で店舗兼住宅の権利変換
・従前資産:土地80㎡・建物(鉄骨造2階建)合計5,000万円相当
・権利変換:施設建築物の床と現金清算500万円
・現金清算分500万円が譲渡所得の対象、5,000万円特別控除で課税ゼロ
例2:幹線道路拡幅による任意買収
・敷地200㎡のうち40㎡を市に1,500万円で売却
・取得費(按分計算):300万円
・譲渡費用:50万円
・譲渡益:1,500万円−300万円−50万円=1,150万円
・5,000万円特別控除適用後:ゼロ
申告手続きと注意点
【必要書類】
・確定申告書、分離課税用申告書(第三表)
・譲渡所得の内訳書
・収用証明書(事業施行者発行)
・買取り等の申出があったことを証する書類
・売買契約書(または収用書類)
・公共事業用資産の買取等の申出証明書
・登記事項証明書、住民票
【特に重要:収用証明書】
収用等の特別控除を適用するには事業施行者(自治体、独立行政法人等)が発行する「収用証明書」が必須。任意買収の場合も「公共事業用資産の買取等の申出証明書」が必要です。買収時に必ず発行を依頼しましょう。
【注意点1:6か月期限】
最初の買取り等の申出から6か月以内に譲渡することが要件。実務上は協議に時間がかかるため、申出を受けたら早めに行動を。期限経過後は本特例不適用となり、原則的な譲渡所得課税となります。
【注意点2:複数年での譲渡】
同一の公共事業で2年以上にわたり段階的に譲渡した場合、最初の譲渡年のみ5,000万円特別控除が適用されます。後続譲渡分は通常の譲渡所得課税。
【注意点3:3,000万円特別控除との関係】
自宅敷地が一部収用された場合、残った敷地・建物に居住し続けるなら3,000万円特別控除は適用されません(譲渡資産が自己居住用財産でないため)。
ただし、収用により残地が居住困難になり全部譲渡する場合は、3,000万円特別控除と5,000万円特別控除の両方の併用検討が可能(条件次第)。
【注意点4:建物の評価】
収用補償の評価で「建物の取壊し費用」「営業補償」「移転料」「動産移転料」「家賃減収補償」などが含まれる場合、それぞれ取扱いが異なります。土地建物の譲渡対価としての5,000万円特別控除と、移転費用・補償金の取扱いは別物として整理が必要です。
【注意点5:青色申告者の場合】
事業用資産が収用された場合、青色申告の事業所得との損益通算が可能。複雑な計算になるため税理士相談が安全。
まとめ
収用等の特別控除は、公共事業による不動産売却時に最大5,000万円の譲渡所得控除が受けられる強力な制度。任意買収にも適用可能、譲渡益5,000万円以下なら完全免税というメリット大。注意点は申出から6か月以内の譲渡、収用証明書の取得、複数年譲渡の場合の制限など。区画整理・都市再開発の権利変換も同様の優遇があり、苫小牧市内でも駅前再開発や道路拡幅で活用機会があります。バナナハウスでは提携税理士・司法書士のご紹介もしておりますので、収用案件の税務でお困りの方はお気軽にご相談ください。
この記事は北海道苫小牧市の不動産仲介会社「バナナハウス株式会社」のコラムです。住宅の購入・売却・賃貸についてご相談はお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年5月現在の一般的な情報に基づきます。実際の手続きや控除額は個別事情により異なるため、税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。


