介護のための手すり設置、段差解消、車椅子対応リフォーム――こうした医療目的のバリアフリー改修は、医療費控除の対象になる場合があります。介護保険給付、バリアフリー改修促進税制との関係、対象工事の判定基準を解説します。
はじめに
「親の介護のために自宅をバリアフリーにしたい」「手すり設置工事は医療費控除になる?」――高齢化が進む中、自宅のバリアフリー化に関する税制活用のニーズが高まっています。バリアフリー改修工事は、医療費控除の対象になるケース、介護保険の住宅改修費給付の対象になるケース、バリアフリー改修促進税制(固定資産税減額・所得税控除)の対象になるケースがあり、要件次第で3つの制度を併用できる場合もあります。本記事では医療費控除との関係を中心に、住宅改修の税制活用ガイドを解説します。
医療費控除の対象となる住宅改修
【医療費控除の基本】
医療費控除は、年間の医療費が10万円(または所得の5%のいずれか低い方)を超えた場合、超過分が所得控除の対象となる制度です。
医療費控除額(上限200万円)=(年間医療費 − 保険金等で補填された金額)−10万円(または所得の5%)
医療費控除によって所得税・住民税が軽減され、所得税率20%の方なら控除額100万円で30万円(所得税20万円+住民税10万円)の節税効果。
【住宅改修が医療費控除になる要件】
住宅改修工事は通常医療費控除の対象外ですが、以下を満たす場合は対象になります:
- 医師の指示があること
主治医や訪問医からの「歩行困難な患者には手すりが必要」等の指示文書または診断書 - 治療または療養に必要であること
予防的・嗜好的なリフォームは対象外 - 介護保険の住宅改修費給付では足りない部分
介護保険給付の自己負担分(1〜3割)は医療費控除対象、自己負担分を超える保険適用外の追加工事も対象になり得る
【対象工事の例】
・手すりの取り付け(廊下、階段、トイレ、浴室、玄関)
・段差解消(敷居の撤去、スロープ設置)
・滑り防止床への変更(浴室、トイレ等)
・引き戸への取替え(開き戸→引き戸)
・洋式便器への取替え
【医療費控除対象外となる例】
・浴室全体のリフォーム(一部の手すり設置以外)
・キッチンのバリアフリー化(医療的必要性なし)
・趣味目的のホームエレベーター設置
・予防的なバリアフリー化(介護が必要になる前の事前対応)
要件が厳しいので、医師の診断書を取得し、税理士と相談しながら対象工事を選定することが重要です。
介護保険の住宅改修費給付
【介護保険の住宅改修費給付】
要介護・要支援認定を受けた方は、対象工事費20万円(生涯1回)まで、自己負担1〜3割(収入により)で住宅改修ができます。
【対象工事】
1. 手すりの取付け
2. 段差の解消
3. 滑り防止および移動の円滑化のための床材の変更
4. 引き戸等への扉の取替え(折り戸、アコーディオンカーテンへの取替えも含む)
5. 洋式便器等への便器の取替え
6. その他、上記改修に付帯して必要となる工事
【給付の流れ】
1. 主治医意見書または住宅改修理由書を取得
2. ケアマネジャーに相談し改修計画作成
3. 工事業者と契約、見積もり取得
4. 市町村に事前申請(着工前必須)
5. 工事実施、工事費全額を施工業者に支払い
6. 領収書とともに事後申請、9割(または7〜8割)が償還払い
【上限額の取扱い】
上限額20万円は「同一住宅・同一被保険者」の生涯枠。ただし、要介護度が3段階以上重くなった場合や、転居した場合は再給付の可能性あり。
【介護保険と医療費控除の併用】
介護保険の住宅改修費給付を受けた工事:
・自己負担分(工事費20万円の1〜3割):医療費控除の対象
・上限超過分や対象外工事:医師の指示があれば医療費控除の可能性
例:手すり設置工事30万円、介護保険給付対象20万円・自己負担2万円(1割負担)、対象外10万円
・介護保険給付:18万円
・医療費控除対象:2万円(自己負担)+10万円(医師指示の対象外分)=計12万円
バリアフリー改修促進税制
【バリアフリー改修促進税制の概要】
50歳以上、要介護・要支援者、障害者、65歳以上の親族と同居する方などが、自宅のバリアフリー改修を行った場合、所得税の特別控除と固定資産税の減額措置が受けられます(2026年5月現在)。
【所得税の特別控除】
ローン控除型と投資型の2種類。
-
ローン型バリアフリー改修控除(償還期間5年以上のローン利用時)
・改修費用合計(上限250万円)の2%を5年間控除
・控除限度額:年間最大5万円×5年=25万円 -
投資型バリアフリー改修控除(ローン利用なしまたは5年未満ローン)
・標準的な工事費用(上限200万円)の10%を控除
・控除限度額:1回限り20万円
【固定資産税の減額】
バリアフリー改修工事を実施した翌年度、家屋の固定資産税額が3分の1減額。減額対象は床面積100㎡相当部分まで、減額期間は1年間。
【適用要件(共通)】
・自己所有・居住している家屋
・改修工事費が50万円を超える(バリアフリー改修自己負担分)
・改修後の床面積50㎡以上
・改修後居住することが見込まれる
・建築後20年または30年以上(地域・特例による)
【対象工事】
・通路の拡幅
・階段の勾配緩和
・浴室の改良
・便所の改良
・手すりの設置
・段差解消
・出入口戸の改良
・滑りにくい床材への取替え
3制度の組み合わせ活用例
【ケース:苫小牧市内・85歳父との同居世帯・バリアフリー改修60万円】
工事内容:手すり設置15万円、段差解消20万円、引き戸取替え15万円、滑り止め床10万円
【介護保険の活用】
父が要介護2、対象工事費20万円までは介護保険給付対象
・介護保険給付:18万円(1割負担2万円)
【医療費控除の活用】
父の自己負担2万円+医師の指示で対象外工事の一部10万円が対象
・医療費控除対象:12万円
・所得税・住民税の節税効果:12万円×20%(所得税)+10%(住民税)=3.6万円
【バリアフリー改修促進税制】
改修工事費40万円が対象(介護保険給付分を除く)→工事費50万円超の要件未達のためこの例では適用不可
総合的なメリット:
・介護保険給付:18万円
・医療費控除節税:3.6万円
・実質負担:60万円−18万円−3.6万円=38.4万円(35%減)
複数制度の併用により、実質負担が大幅に圧縮できます。
まとめ
バリアフリー改修工事は、医療費控除、介護保険住宅改修費給付、バリアフリー改修促進税制の3制度を併用することで実質負担を大幅に減らせます。ただし要件は厳格で、医療費控除には医師の指示書、介護保険には事前申請、税制優遇には工事費要件など、それぞれ別個の条件があります。工事前にケアマネジャー・税理士・施工業者と打ち合わせ、各制度の要件を満たす形で計画することが重要。バナナハウスでは苫小牧市内でバリアフリーリフォーム対応の物件のご紹介もしておりますので、介護を見据えた住まいづくりをお考えの方はお気軽にご相談ください。
この記事は北海道苫小牧市の不動産仲介会社「バナナハウス株式会社」のコラムです。住宅の購入・売却・賃貸についてご相談はお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年5月現在の一般的な情報に基づきます。実際の手続きや控除額は個別事情により異なるため、税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。


