コラム

不動産に関するお役立ち情報

特定居住用財産の買換特例|課税繰り延べで譲渡所得税をゼロにする方法
ローン・税金 2026年05月27日

特定居住用財産の買換特例|課税繰り延べで譲渡所得税をゼロにする方法

マイホーム売却益に課税される譲渡所得税を、新居取得により将来に繰り延べる「特定居住用財産の買換え特例」。所有期間10年超で1億円以下の売却が条件、3,000万円特別控除との選択になる制度を実例で解説します。

はじめに

「マイホームを売却して大きな譲渡益が出たが、新居を取得すれば課税を繰り延べられる?」――住み替え時の譲渡所得税対策として、3,000万円特別控除に並んで活用される制度が「特定居住用財産の買換え特例」です。所有期間10年超のマイホームを売却し、1億円以下の取引で新居を取得した場合、課税を将来の新居売却時まで繰り延べる仕組み。本記事では制度の仕組み、適用要件、3,000万円特別控除との比較、注意点を解説します。

制度の仕組み|課税繰り延べとは

【特定居住用財産の買換え特例】
所有期間10年超の自己居住用財産(マイホーム)を売却し、その譲渡対価で別の自己居住用財産を取得した場合、譲渡所得への課税を繰り延べることができる制度。

【課税繰り延べの仕組み】
通常、マイホーム売却で譲渡益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。本特例を使うと、新居取得分について課税が繰り延べられます。

ケース1:売却価額≦新居取得価額
譲渡所得への課税はゼロ(完全繰り延べ)

ケース2:売却価額>新居取得価額
譲渡対価のうち新居取得部分は繰り延べ、超過分には課税

【繰り延べの将来時点】
新居を将来売却する際に、過去の繰り延べ譲渡益が加算されて譲渡所得税が課税されます。つまり「永久に免税」ではなく「将来に繰り延べ」るのが本特例の特徴。

【課税ゼロ実現の計算例】
苫小牧市内・所有期間20年のマンションを5,000万円で売却し、新居を5,500万円で取得
・旧居取得費(建物減価償却後):2,000万円
・旧居譲渡費用:200万円
・本来の譲渡益:5,000万円−2,000万円−200万円=2,800万円
・特例適用後:
 - 売却価額5,000万円≦新居取得価額5,500万円
 - 譲渡所得への課税:ゼロ
・新居取得価額の引継ぎ:旧居の取得費を新居取得費とする計算で、新居の取得費は引継後の金額になります(将来売却時の計算に影響)

【部分的課税のケース】
苫小牧市内・所有期間15年の戸建てを5,000万円で売却し、新居を3,500万円で取得
・売却価額5,000万円>新居取得価額3,500万円
・差額1,500万円が課税対象
・課税譲渡所得:1,500万円−本来の譲渡費用按分−取得費按分(按分計算が必要)
・税率(軽減税率の特例適用なら):14.21%

新居取得価額が売却価額を大幅に下回る場合は、本特例より3,000万円特別控除のほうが有利になる場合があります。

適用要件|旧居・新居・期間

【旧居の要件】
・自己の居住用財産で、譲渡年の1月1日時点で所有期間10年超かつ居住期間10年以上
・譲渡価額:1億円以下
・買換特例、3,000万円特別控除、軽減税率の特例、譲渡損失の損益通算等を併用していない

【新居の要件】
・床面積50㎡以上240㎡以下
・敷地面積500㎡以下(マンションは適用なし)
・耐火建造物:築25年以内または新耐震基準適合
・非耐火建造物:築25年以内
・取得時期:旧居を譲渡した年の前年1月1日から翌年12月31日まで
・居住開始:取得した年の翌年12月31日まで(売却が新居取得より後の場合は売却年の翌年12月31日まで)

【1億円要件の確認】
譲渡対価1億円以下が要件。土地・建物の合算で判定。共有名義の場合は各人の持分相当額で計算。1億円超の取引には本特例は使えません。

【適用期限】
2025年12月31日までに譲渡したもの(適用期限が延長されている可能性あり。最新情報を国税庁で確認)。

3,000万円特別控除との比較|どちらが有利か

【3,000万円特別控除との選択関係】
特定居住用財産の買換特例と3,000万円特別控除は併用不可。どちらか有利な方を選択する必要があります。

【3,000万円特別控除の概要】
・自己居住用財産の譲渡益から最大3,000万円を控除
・所有期間要件なし(買換特例は10年超必須)
・売却価額要件なし(買換特例は1億円以下)
・新居取得不要(買換特例は新居取得必須)

【選択判断のポイント】

ケース1:譲渡益≦3,000万円
3,000万円特別控除で完全免税。買換特例は不要。

ケース2:譲渡益>3,000万円かつ新居取得予定
両者の比較が必要:
・3,000万円特別控除+軽減税率の特例:譲渡益−3,000万円×14.21%
・買換特例:売却価額≦新居取得価額なら課税ゼロ(ただし将来の課税ベース増加)

ケース3:譲渡益>3,000万円かつ新居取得なし
3,000万円特別控除しか使えない。

【数値で比較:譲渡益5,000万円のケース】
苫小牧市内・所有期間20年のマンションを6,000万円で売却(取得費900万円+譲渡費用100万円、譲渡益5,000万円)、新居を6,500万円で取得した場合:

3,000万円特別控除+軽減税率の特例:
・課税譲渡所得:5,000万円−3,000万円=2,000万円
・税額:2,000万円×14.21%=284.2万円

買換特例:
・売却価額6,000万円<新居取得価額6,500万円
・課税:ゼロ
・ただし、将来新居を売却する際に取得費が引継がれるため、その時点で過去の譲渡益5,000万円分が課税ベースに加算される

判定:
譲渡時点の節税効果は買換特例が大きい(284.2万円の差)。ただし将来新居を売却した際に多額の課税が発生するため、新居の長期居住・終身居住を前提とするなら買換特例、新居も将来売却する可能性があるなら3,000万円特別控除が有利になる場合も。

【実務的な選択基準】
1. 譲渡益が3,000万円以下:3,000万円特別控除一択
2. 譲渡益が3,000万〜5,000万円程度:両者試算して有利な方
3. 譲渡益が5,000万円超で新居取得予定:買換特例が有利な傾向
4. 終身居住の新居なら買換特例、住み替え繰り返すなら3,000万円特別控除

申告手続きと注意点

【必要書類】
・確定申告書、分離課税用申告書(第三表)
・譲渡所得の内訳書
・旧居・新居の登記事項証明書、売買契約書、住民票
・新居の取得を証する書類(売買契約書、工事請負契約書)
・買換取得した日から3か月以内に「買換特例適用の届出書」を税務署に提出(取得が後の場合)

【申告期間】
譲渡した年の翌年2月16日〜3月15日。新居取得が譲渡翌年の場合、譲渡年の確定申告では「適用見込み」として申告し、新居取得後に修正申告という運用もあります。

【注意点1:将来課税の存在】
本特例は「免税」ではなく「課税繰り延べ」。新居を将来売却する際に過去の譲渡益も加算されて課税されます。新居の長期居住・終身居住が前提でないと節税効果が薄まります。

【注意点2:新居取得期限】
新居の取得は譲渡年の前年〜翌年の3年間。期限を過ぎると特例不適用。

【注意点3:居住開始義務】
新居取得後一定期間内(取得した年の翌年12月31日まで)に居住開始すること。賃貸目的や別荘目的の取得は対象外。

【注意点4:新居の住宅ローン控除との関係】
本特例を使う場合、新居の住宅ローン控除は適用不可(譲渡年・前2年・後3年は適用不可)。住宅ローン控除のほうが13年間で大きな控除を受けられる場合もあるので、ローン控除と本特例の比較も必要。

まとめ

特定居住用財産の買換え特例は、所有期間10年超のマイホームを1億円以下で売却し新居を取得する場合に、譲渡所得への課税を繰り延べる強力な制度。譲渡益が3,000万円を大きく超えるケースで効果絶大ですが、新居の住宅ローン控除と併用不可、将来の課税ベースに加算など注意点も多数。3,000万円特別控除との比較、住宅ローン控除との関係、終身居住か住み替え繰り返しかなど、ライフプランに応じた選択が必要です。バナナハウスでは苫小牧市内で住み替えをご検討の方への売却・購入両面のサポートを提供しておりますので、提携税理士のご紹介とともにお気軽にご相談ください。


この記事は北海道苫小牧市の不動産仲介会社「バナナハウス株式会社」のコラムです。住宅の購入・売却・賃貸についてご相談はお気軽にお問い合わせください。

※本記事は2026年5月現在の一般的な情報に基づきます。実際の手続きや控除額は個別事情により異なるため、税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。