親から相続した実家を売却するときに使える「被相続人の居住用財産(空き家)の譲渡所得の3,000万円特別控除」。相続から3年以内の売却、耐震改修または取壊し、対価1億円以下など要件を満たすと、譲渡益から最大3,000万円が控除されます。
はじめに
「親が亡くなって実家が空き家になった」「相続した古い家を売却したいが税金が心配」――こうした相続空き家問題に対応する税制が、空き家3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)の譲渡所得の3,000万円特別控除)です。一定の要件を満たす空き家を相続から3年以内に売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円が控除される強力な制度。苫小牧市内でも空き家化が進む築古戸建ての売却時に活用機会の多い特例です。本記事では制度の概要、要件、申告手続きを実例で解説します。
空き家3,000万円特別控除の概要
【制度創設の背景】
全国的に空き家が増加し、防犯・防災・景観上の問題となっています。空き家の発生を抑制するため、相続した空き家を売却する所有者の税負担を軽減し、市場流通を促す目的で2016年に創設。2024年改正で要件の一部緩和と適用期限延長が行われました。
【控除内容】
被相続人(亡くなった親など)が居住していた家屋・敷地を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
譲渡所得 =(譲渡収入 − 取得費 − 譲渡費用)− 最大3,000万円
【適用期間】
2027年12月31日までの譲渡(適用期限が延長される可能性あり。最新情報を国税庁で確認)。
【3,000万円控除の上限】
相続人1人につき3,000万円。複数の相続人で共有相続している場合、各人がそれぞれ3,000万円控除できます。ただし2024年改正で「相続人3人以上の場合は1人当たり2,000万円」に減額されています。
例:兄弟2人で実家を共有相続し、5,000万円で売却した場合(取得費500万円、譲渡費用200万円):
・譲渡所得:5,000万円−500万円−200万円=4,300万円
・兄の譲渡所得:4,300万円×1/2=2,150万円、3,000万円特別控除でゼロ
・弟の譲渡所得:同様にゼロ
・全体の税額:ゼロ
これに対し、相続人3人で共有相続し同条件で売却の場合:
・各人の譲渡所得:4,300万円×1/3=1,433万円、2,000万円特別控除でゼロ
兄弟が多くても全員が控除を享受できます。
適用要件|被相続人・家屋・売却の3条件
【被相続人(亡くなった方)の要件】
・相続の直前まで被相続人が一人で居住していたこと(同居人がいない単身居住)
・要介護認定等を受けて老人ホーム等に入居していた場合も、一定要件のもと適用可能(2019年改正)
【家屋の要件】
・1981年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)
・区分所有建物(マンション)でないこと
・相続開始直前まで被相続人が居住していたこと
【売却・改修の要件】
売却時に以下のいずれかの状態にすること(重要):
A. 譲渡前に耐震改修工事を行い、新耐震基準に適合
・耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震等級1以上)の取得
・改修工事完了後の譲渡
B. 譲渡前に家屋を取り壊し、敷地のみ譲渡
・解体工事完了後の更地譲渡
・解体費用は譲渡費用に算入可能
C. 2024年改正で追加:譲渡後に買主が耐震改修または取壊しを行う場合も適用可能に
・売主と買主の特約により、譲渡後一定期間内(譲渡年の翌年2月15日まで)に改修または取壊し
・売主は適用要件確認の責任あり
【その他の要件】
・譲渡対価:1億円以下
・相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(実質3年以内)に譲渡
・相続から譲渡まで継続して空き家であること(被相続人の死亡後、誰も居住・賃貸していない)
・他の特例(買換特例、特定譲渡損失の損益通算等)と併用不可
具体例|苫小牧市内の実家売却
【ケース1:1980年築・親が単身居住していた実家を解体して売却】
苫小牧市内・木造2階建て・敷地150㎡・1980年築の戸建てを、母(85歳)の死亡で相続した子(独身)が、解体後に1,500万円で売却:
・相続:2024年2月、被相続人は単身居住、1980年築なので要件OK
・解体:2025年5月、解体費用80万円
・売却:2025年10月、譲渡対価1,500万円
・取得費(路線価評価ベース概算):300万円
・譲渡費用:解体費用80万円+仲介手数料55万円=135万円
・譲渡所得:1,500万円−300万円−135万円=1,065万円
・3,000万円特別控除適用後:ゼロ
・税額:ゼロ
【ケース2:耐震改修して売却】
苫小牧市内・木造平屋・敷地180㎡・1975年築を相続し、耐震改修300万円を実施後に2,000万円で売却:
・相続:2024年8月、要件OK
・耐震改修:2025年3月完了、新耐震基準適合
・売却:2025年8月、譲渡対価2,000万円
・取得費:500万円
・譲渡費用:耐震改修費は譲渡費用ではなく取得費に算入。仲介手数料72.6万円
・取得費合計:500万円+300万円=800万円
・譲渡所得:2,000万円−800万円−72.6万円=1,127.4万円
・3,000万円特別控除適用後:ゼロ
・税額:ゼロ
耐震改修費は資本的支出として取得費に算入されるので、譲渡益が圧縮される効果があります。
【ケース3:2024年改正の譲渡後改修・取壊し】
2024年改正で、譲渡後に買主が耐震改修または取壊しをする場合も適用可能に。これにより以下のケースが可能になりました:
・売主は古家ありで売却(買主が解体予定)
・売買契約に「譲渡翌年2月15日までに買主が解体する」旨を明記
・売主は3,000万円特別控除を適用
これで売主の解体費用負担がなくなり、買主が自由なタイミングで解体・建替できるメリット。
申告手続きと注意点
【必要書類】
・確定申告書、分離課税用申告書(第三表)
・譲渡所得の内訳書
・被相続人居住用家屋等確認書(市区町村発行)
・登記事項証明書(被相続人居住の事実、相続による所有権移転を証明)
・売買契約書、解体工事契約書、耐震改修工事契約書(該当ある分)
・耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震改修ありの場合)
・電気・ガス・水道等の使用中止証明(空き家継続性の証明)
【被相続人居住用家屋等確認書】
本特例の鍵となる書類が市区町村発行の「被相続人居住用家屋等確認書」。被相続人が単身で居住していたこと、相続後に継続して空き家であったこと等を市区町村が証明する書類です。
申請には:
・被相続人の住民票(除票)
・相続人の住民票
・電気・ガス・水道等の使用中止証明書(解約証明書、料金明細書等)
・家屋・敷地の登記事項証明書
・売買契約書
提出後1〜2週間で発行されることが多いです。
【注意点1:相続から3年以内の譲渡】
相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡完了が要件。2024年2月相続なら2027年12月31日まで。期限を1日でも過ぎると不適用。
【注意点2:継続的空き家】
相続後に誰かが居住したり、賃貸した場合は適用不可。固定資産税対策のため一時的に賃貸する場合も注意。
【注意点3:兄弟共有の場合の手続き】
共有相続人それぞれが個別に確定申告し、それぞれ3,000万円(または3人以上の場合2,000万円)特別控除を適用。一人が手続きを忘れるとその人の分は控除されません。
【注意点4:耐震改修の場合の取得費算入】
耐震改修工事は資本的支出として取得費に算入されますが、譲渡費用には算入できません。譲渡費用と取得費は別物として整理を。
まとめ
空き家3,000万円特別控除は、相続した実家の売却時に最大3,000万円(相続人3人以上の場合は2,000万円)が譲渡所得から控除される強力な制度。要件は厳格ですが、ほとんどの相続空き家ケースで譲渡所得をゼロにできる効果絶大の特例です。2024年改正で「譲渡後の改修・取壊し」も対象になり使い勝手が向上。苫小牧市内でも親の代の戸建てが空き家化するケースが増えており、本制度の活用機会は多数あります。バナナハウスでは苫小牧市内の相続空き家売却のサポートを多数行っており、提携税理士・司法書士のご紹介もしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事は北海道苫小牧市の不動産仲介会社「バナナハウス株式会社」のコラムです。住宅の購入・売却・賃貸についてご相談はお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年5月現在の一般的な情報に基づきます。実際の手続きや控除額は個別事情により異なるため、税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。


