共有名義の不動産は、共有者全員の同意がないと売却できません。同意を取り付ける順序、持分売却の選択肢、譲渡所得の計算方法まで、トラブルを避けるポイントを解説します。
はじめに
夫婦・親子・兄弟で共有名義になっている不動産は、売却に際して特有の難しさがあります。共有者の1人でも反対すると物件全体の売却ができず、また譲渡所得の申告も各人ごとに行う必要があるなど、単独名義より手続きが複雑です。離婚・相続・親世代の介護といったライフイベントを機に売却を検討するケースが多く、感情的な対立も絡みやすい場面です。本記事では共有不動産の売却手順、全員同意が取れない場合の対処法、税金計算の留意点を整理して解説します。
売却には共有者全員の同意が必要
民法上、不動産の処分(売却)は共有者全員の同意がなければ行えません。共有者の1人が「売りたい」と思っても、他の共有者全員が「売らない」と反対すれば物件全体を売却することはできません。逆に全員が売却に賛成すれば、通常の取引と同じ手順で進められます。共有名義の売却で最初にやるべきことは、共有者全員の意向の確認と、売却価格・配分の合意形成です。たとえば兄弟3人で1/3ずつ共有している実家を3,000万円で売却する場合、各人の取り分は税金や仲介手数料を引いた残りを持分比率で配分します。手取り計算は売買価格3,000万円から仲介手数料約105万円、登記費用・印紙等15万円、譲渡所得税は各人別計算、として残り金額を3等分する形が一般的です。共有者の数が多いほど合意形成に時間がかかり、特に相続物件で共有者が4〜5人いる場合は数ヶ月から1年以上の調整期間が必要です。
同意が取れない場合の選択肢
全員同意が取れない場合の選択肢は、(1)自分の持分だけを売却する、(2)他の共有者の持分を買い取って単独所有にしてから売却する、(3)共有物分割請求訴訟を起こす、の3つです。(1)の持分売却は、共有者全員の同意がなくても法的には可能ですが、現実には買い手がほぼいません。なぜなら持分だけ買っても建物全体を使えず、他の共有者と権利関係が複雑なまま残るためです。例外的に「共有持分専門の買取業者」が存在しますが、市場価格の3〜5割という大幅な値引きを受け入れる必要があります。(2)の持分買い取りは、共有者間で価格交渉を行い、単独所有にしてから通常売却する方法で、最も現実的な解決策です。(3)の訴訟は最後の手段で、裁判所が「現物分割・代金分割・価格賠償」のいずれかを命じます。期間は半年〜2年、費用は数十万円〜100万円超かかるため、できる限り和解で解決することが望ましいです。
譲渡所得税は持分ごとに計算
共有不動産を売却した場合、譲渡所得税は共有者それぞれが個別に計算・申告します。たとえば兄弟3人で1/3ずつ共有していた実家(取得費1,500万円・売却価格3,000万円・諸費用150万円)を売却した場合、各人の譲渡所得は(3,000万円-1,500万円-150万円)÷3=450万円です。長期譲渡(所有期間5年超)なら税率は所得税15%+住民税5%+復興特別所得税で約20.315%、450万円に対して約91万円が各人の納税額です。マイホーム売却の3,000万円特別控除は、各共有者がそれぞれ3,000万円まで適用できるため、共有者全員が実際に住んでいた場合は3人で合計9,000万円まで控除可能という大きなメリットがあります。ただし「居住していた」要件は各人ごとに判定されるため、別居している共有者は控除を受けられない点に注意が必要です。
まとめ
共有名義の売却は、全員同意の取り付けが第一関門で、合意形成に時間をかける覚悟が必要です。同意が取れない場合は持分買い取りで単独所有にするのが最も現実的で、譲渡所得税はそれぞれ個別に計算します。3,000万円特別控除を各共有者が使える点は大きなメリットなので、居住要件を満たすかどうかは早めに確認しましょう。バナナハウス株式会社では共有名義の売却交渉や持分買い取りの実務支援、税理士の紹介まで対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事は北海道苫小牧市の不動産仲介会社「バナナハウス株式会社」のコラムです。住宅の購入・売却・賃貸についてご相談はお気軽にお問い合わせください。


